Tea-Wi's Peaceful World

プレイしたゲームとかの記録をつれづれと( ❛‿❛ )

遊びやすさと手強さの融合!――『両手いっぱいに芋の花を』プレイ感想

『両手いっぱいに芋の花を』タイトルコール

昨年発売されたインディーズのダンジョンRPG作品です。
DRPG界隈でかなりの高評価を得ており、自分もSteamセール期間中に購入していました。

年明けの新作1本目にふさわしいだろうと思い、プレイ開始。
高評価を受けている理由がよく分かる、唸るほど遊びやすさに配慮された作品でした。

なお、遊びやすいとは言いましたが低難易度とは言っていません
可愛らしい見た目に反して敵の攻撃は強力で、ちゃんと戦術を組まないと簡単に全滅できる程度には難易度は高い作品になっています。

しかし、戦闘内外で得られる情報は非常に多く、その情報に応じて作戦を立てれば嘘のように楽に勝てたりすることもままあります。極めて戦術性に優れた作品といえるでしょう。

ということで続きから詳細な感想を述べていきたいと思います。

8種の職業と8人のキャラクター枠

本作のキャラメイク。可愛らしいですね。

本作のキャラメイクは8種のクラスが存在し、キャラメイクの枠も8枠までです。
よって初見プレイでは全てのクラスで1名ずつ作るというのが分かりやすいでしょう。

2周目以降ではあえてクラスを被らせながらも育成方針を変える、なんてこともアリかもしれません。

見た目に選べる種族たち。性能差はない。

また見た目も7つの種族から選ぶことができ、更に髪や目の色や形もいくつか選べます。
可愛らしい見た目もあってキャラメイクが結構楽しいゲームですね。

育成の基本

キャラクターの育成はレベルアップごとにステータスが上昇するほか、「技能」を習得できる「技能ポイント」が手に入り、その技能ポイントを割り振ることでできることが増えていきます。
DRPG的には『世界樹の迷宮』に近いシステムと言えば通りが良いのではないでしょうか?

なお、一般的なクリアレベルでは全ての技能を習得することは不可能です
よってある程度方針を絞って育成するべきですが、初回プレイではなかなか難しいでしょう。
一応振り直しはできますが、本作の通貨に当たる「鉄」を大量に支払う必要があるため、気軽にというわけにはいきません。

またPT編成できるのは3名までなので、絶妙に「役割を振り切れない」という場面が多く、いわゆる「万能」なパーティーはなかなか見出しにくいです。
そのため重要な戦闘ごとにパーティーを組む重要性が高くなり、本作の戦術性の高さに一役買っています。

本作は戦闘で得られる経験値のレベル差補正が非常に大きいため、いっそのこと「人員整理」でキャラを削除し、新規に作り直してしまった方がお手軽かもしれません。

また、本作では全てのクラスが全ての装備をすることが可能です。
各クラスによって技能が異なり、それに応じて得意な装備が自然と決まってくるという足し算型のシステムになっています。
逆に言えばPT内で急遽役割を持たせる必要がある場合はあえて得意ではない装備を持たせる(例:飛行型の敵ばかりなので弓を持たせる)場面もあるでしょう。

基本的なステータスは「体力」(いわゆるHP)、「精神力」(いわゆるMP)、そして重要なのが「スタミナ」。
スタミナに関しては後々戦闘システムの解説でガッツリ触れていきます。

クラス短評

ウォーリアー

よく考えたらナイトの方が合っていた気がするフウカ。
終盤に入手できる「竜狩りの大剣」と「見切りチュニック」で超回避キャラに。

近接武器の扱いに長けたクラス。特に剣や斧が得意。

技能は主に片手武器と盾を併用する「盾修練」から派生する系統と、両手武器を用いた「両手武器修練」から派生する系統に分かれます。
前者は盾を持てるので防御面に優れる他、単体攻撃のスキルを覚えます。また「ジャンプ斬り」や「投げ斧」のお陰で遠距離攻撃も比較的得意という特徴があります。
後者は「パリィ」などで防御面を補える他、「回転斬り」や「床破壊」といった豪快な全体攻撃を覚えます。
流石に両立は技能ポイント的に無理なのでどちらかに絞りたいところ。

体感基礎」や「重装修練」、「挑発」のお陰で盾役にも向きます。

ナイト

盾要員筆頭のアキ。

盾と片手槌・片手槍を持って味方を護るクラス。
両手武器も持てますが盾を捨てるデメリットは大きいです。

盾は防御だけではなく攻撃にも使え、特に1ターン強制的に攻撃をキャンセルさせる「盾の突進」はかなり優秀。
もちろん防御系スキルにも長けており、「重装修練」はもちろんのこと、ターゲットを自分に固定する「挑発」、常時斬・打・突の物理3属性に10%の耐性を与える「○○の受け身」、ガード不能攻撃ですら問答無用で90%軽減する「耐久」など目白押し。

基本的にはウォーリアーかナイトのどちらかを前衛に立たせることになるでしょう。

クレリック

必須そうにみえて実はそうでもないクレリック

回復と退魔を司る「奇跡」系スキルと槌スキルを使うクラス。

回復役というとRPGでは必須に思えるが、本作では戦闘後にHPが全回復する都合上必須性は高くないです
敵の行動に合わせて防御を的確に固めることができれば被ダメも少なく済むため戦闘中に回復が必要になる場面が意外と少ないんですね。
それでも回復量の多さは他クラスのスキルの比ではないのでボス戦など長期戦が見込まれる場合には活躍しますが。

よって回復以外の役割も持たせておきたいところで、非生物モンスターの掃討に便利な「退魔」や敵の防御力を下げる槌スキル「粉砕」などはかなり便利。

しかしこれらのスキルばかり使っていると肝心の回復時にMPが残らないことも多く、リソース管理が特に難しいクラスといえる。最大MPを増やすスキルが1Lv分しかなく、+8が限界なのも痛いです。

シャーマン

今回はあまり出番がなかったシャーマン。

クレリックと並ぶ回復役のシャーマン。槍スキルも得意。

回復スキルは呪文だけではなく「水薬」を用いた道具型も使えるという特徴があり、こちらは依存ステータスが魔力ではなく技巧という別のステータスになっています。
回復量では基本的に劣りがちだが行動速度で勝り、またスタミナの回復までできるのはこちらの特権。敵にデバフを浴びせることもできますね。

また、「仮装」という「プレイヤー側を非生物扱いにする」一風変わったスキルがあるが、これがとあるボスで覿面に有効。前提で取ることになる「ミニオン」という召喚魔物への対策スキルも噛み合っており、このボス戦のためだけにもキャラメイクしておく価値は十分。

レンジャー

何かと便利なレンジャー。こちらもカナヤと別にすべきだったか。

弓の扱いに長け、一風変わった道具技や動物召喚も得意なクラス。
また命中率を上げるスキルを多数覚え、敵が回避技を使わない限りは極めて信頼性が高い攻撃が可能です。

弓スキルは状態異常技や先制攻撃技、空中特効技など非常に多彩かつ極めて優秀
また道具技も蘇生の「応急手当」や敵のガードを一定時間封印する「投げ槍」など有用なものが揃っています。

動物召喚も単純にターゲットが1体増えるだけでも安全性に寄与する。防御能力が高い「熊の呼び出し」は特に便利。

……ここまで書いて分かるとおり、レンジャーは全クラス中でも特にやれることが多く、育成方針が散らばると中途半端な存在になりかねないのが大きな欠点。
また攻撃属性が突属性一辺倒なため、場面によっては突耐性の敵だらけで全然活躍できないこともあります。

更にスキルが優秀にもかかわらず最大MPを強化するスキルを一切覚えないため、非常にガス欠し易いのも痛手。
総じてプレイヤーによって個性が大いに分かれそうなクラスですね。

ローグ

短剣二刀流が映えるローグ。

二刀流の短剣と回避技、投げナイフを中心とした道具技を操るクラス。

短剣は素早く連続攻撃でき、更に状態異常や回避攻撃も操れる。その割に攻撃力も低くないため、見た目に反して割と火力が出ます。
更に「近接戦闘術」スキルで回避率を大きく上げられるため生存性もなかなか。両方極めると技能ポイントを大量に使うのが欠点か。

一方の道具技は近接攻撃を敵味方問わず8割カットする「鉄格子」が目玉。他のPTメンバーも遠隔型キャラで固めると安全性と火力を両立できます。
そしてこの「鉄格子」と噛み合っているのが「投げナイフ」系スキル。自前で遠隔攻撃できるので実に噛み合わせに優れてますね。

1~2番目に置くなら短剣、3番目に置くなら投げナイフメインか。
両方やろうとすると技能ポイントが足りません(体験談)

ウィザード

今回も大活躍のナオ。魔法使いはお前に任せた

火・突・斬・打の4属性を網羅できちゃうクラス。
全ての攻撃スキルが魔力依存なお陰で魔力特化の装備をし易いのも嬉しい。
また魔法はスタミナをあまり消耗しないため連射性に優れるのも大きな強みですね。

スキル「魔力温存」で最大MPを大きく増やせる上に、各属性の消費MPを1減らす「○○の書」スキルのお陰で、イメージに反して意外とガス欠しにくいです。
特に突属性の「氷柱」は優秀で、「水の書」を習得した上で「水鏡の杖」を装備するとなんと消費MPがゼロになる。その割に威力もそこそこあり、道中の雑魚散らしにはこれで十分なことも多かったりします。
打属性の「石つぶて」も弱点とする敵が多く、更に敵の防御力にマイナス補正を掛けるため、敵が硬くなる後半ほど強烈な威力を発揮します。

全体攻撃は2ターン詠唱のものが多いもののいずれも凄まじい性能で、1ターンで撃てるものも「風の刃」は空中特効、「からみつく蔦」は敵の回避ダウンと追加効果もかなり便利。

防御スキル「魔法の障壁」のお陰で最低限の自衛も可能なのも嬉しく、魔力特化装備すると防具が紙になるのを差し引いても生存性は悪くないです。

一方、味方の武器に特殊効果を付与するエンチャント系魔法は消費MPが高い割にはやや旨みに乏しく、1ターン掛ける価値があるかは微妙な場面が多かったりします。
逆にエンチャント系を全て捨てると技能ポイントも比較的余裕が出やすいです。

とことん万能なクラス。特に理由がなければ1人連れて歩いておきたいですね。

ソーサラー

魔法使いと召喚士を足して2で割ったような感じ

炎属性に特化した魔法と、生物にのみ有効な謎の妖術、そして使い魔召喚が特徴のクラス。

妖術はガード不能という特性があるため盾持ちの敵に強く、また非生物の敵の多くは火属性弱点なのでそちらでカバー可能というのが強みです。ただ両方育てようとすると技能ポイントがかなり苦しいけど……。

使い魔は炎魔法で攻撃してくれるがこれがどえらく強い。高威力な上に全体攻撃なので雑魚掃討に打ってつけ。しかも育成しきると消費MPがたったの1になるというおまけも。
ただ流石に妖術型との両立は技能ポイント的にかなり厳しいのが欠点。

単体攻撃能力はウィザードに劣るものの、代わりに雑魚掃討能力を更に上げたようなクラス。あちらほどの汎用性はないがこちらもなんだかんだで強いです。

クリア時のパーティ。いつもの面々です。

練られたダンジョン構造

上下見下ろしも自由自在。

ダンジョンRPGなのでダンジョン構造の話も。

まず、大前提として本作は完全シンボルエンカウントです。しかもシンボルは移動しません。
そのため事故的なエンカで一気に全滅ということは基本的には起こらない上、場面によっては側面・背面から接触すれば先制攻撃もできちゃいます。
またメニュー画面からいつでも帰還できるため、後述の戦闘後全回復の仕様もあり「厳しそうなら後のことは考えずに全力で戦ってもいい」というのも分かりやすくて良い点。

あちこちにショートカットとなる片方からしか開けられない扉や鉄格子が仕込まれているため、「一定回数戦闘してショートカットを開ける→帰還してMP回復、再度突入する」という流れがメインになります。

このショートカットの配置が上手く、直前には中ボス格の敵が居ることが多いのですが道中の消耗も合わせて絶妙にギリギリ撃破できるラインを狙ってきます。

また本作の特徴として、「○○階」という大きい階層の他に、同一階層内にも高低差が仕込まれています。『世界樹の迷宮X』を思い出す仕様ですね。

tea-wind.hatenablog.com

序盤は1段分しか降りられませんが、あるキーアイテムを入手することで2段分飛び降りられるようになって探索範囲が広がります。
このあたりは近年流行りのメトロイドヴァニア的な探索スタイルも兼ねている感じがします。

もちろんDRPGらしく「鍵」も多数登場。アイコンでどの鍵がどの扉か分かりやすい他、複数の扉に対応している鍵は色分けもされているので比較的親切です。

マップはもちろんオートマッピング完備。しかも良くある「踏んだマスだけマッピングされる」形式ではなく「視界に入ったところまでマッピング」される仕様なので優秀。

また「暗い場所では地図が見えない」ということで明かりを灯す「たいまつ」の重要性が高く、また壁にあるろうそくに火を点けていくことも重要になります。たいまつゲージが実質的な探索制限時間!
まあ、戦闘に必死になってるとたいまつゲージが切れる前にMPが切れることがほとんどなのですが。

あらゆる情報を用いて勝利せよ!――戦闘システム

戦闘中の情報量はめちゃくちゃ多い

本丸の戦闘システム。

まず、本作では戦闘中に得られる情報がどえらく多いです。
探索隊のチーフからヒントを貰うのが一番分かりやすいのですが、他にも敵の攻撃・ターゲット・命中率がコマンド選択中に表示されていたり、モンスター図鑑を見られたり、敵の使用するスキルの詳細効果まで見られたりと、とにかく戦闘に必要な情報は大体見られます

ついでに戦闘前でも、ダンジョンに表示されるシンボルで敵の名前も判別できるため、初見でないモンスターなら事前に有利な装備に着替えておいたりもできます。

例えばこの「可燃性スライム」なら斬撃と火炎に弱くて打撃に強いというのが一目瞭然

その代わり、戦闘中に得られる情報をフル活用しないと厳しい戦いになるという側面もあります
敵の攻撃力は全体的に高く、適正レベルで防具を整えていても通常攻撃1発食らうだけで半分削られたりとかザラで、的確に防御しないと簡単に死ねます。
防御面も弱点を突いたりしながら適正なスキルを使っていかないと思うように削れなかったりします。

そしてここで重要になってくるのが「スタミナ」の概念。
攻撃などの行動を行う際に段々減っていき、「構え直し」という行動を取ることで回復します。消費量は武器やスキル行動ごとに設定されています。

これだけならわかりやすいのですが、問題は「防御」状態で敵の攻撃を受けた時にスタミナが足りないとガードクラッシュしてしまうこと。
何も考えずに使い切ったら構え直し……のつもりでいると敵の攻撃をガードできずに死にます。

一見鬱陶しいだけに見える要素ですが、スタミナは敵にも設定されており、しかも例えラスボスであっても極端に高い数値が設定されていたりはしません
敵もスタミナを切らすと構え直しで隙を見せるので、態勢を立て直したり攻撃チャンスにできます。
そしてプレイヤー側にも敵のスタミナを削りやすい技があったり、構え直し時の回復量を減らす技があったりと戦術の幅も多彩。

武器や盾には「受け能力」というスタミナ消費軽減量を示すステータスがありますが、これが高い装備をつけるとガードクラッシュの危険性を減らせます。
これを利用して高性能な盾を持たせた盾役が「挑発」や「口上」を使い敵の攻撃を引きつけるとかマジオススメ。

スタミナは本作の高い戦術性を支える、極めて奥深い要素です。

重要な点として、戦闘後にHPや状態異常は全回復します。戦闘不能も例外ではありません。回復しないのはMPだけ。
そのため「RPGには回復役は必須」という価値観に真っ向から立ち向かうゲームバランスとなっており、「ちゃんと防御できていればHPは保つ」「やられるまえにやればいい」というプレイスタイルも許容されます。

そして全滅しても拠点に戻されるだけで、ペナルティは一切ありません。得たアイテムや経験値はそのまま手元に残りますし、もちろん寺院にお金を払って「まいそうされます」なんてこともありません(笑)

更に本作の経験値には極めて強いレベル差補正が掛かっているため、「ボスで苦戦したから別のPT編成を試したい……」なんてときも引率2名+育成したいキャラ1名とすればあっという間に追いついてきてくれます。
これも試行錯誤をしやすくしている非常に良い点だと思います。

総評――遊びやすさと手強さが高度に融合!

今までそれなりの数のDRPGを遊んできたと思いますが、ここまで高度に「遊びやすく」かつ「手強さ」を兼ね備えた作品はちょっと他に思いつきません
発売直後からDRPG界隈で絶賛されただけの完成度は間違いなくある作品です。

貴方は、文明が幾度も崩壊した世界で人々に食料となる「芋」を届けることができるでしょうか?