『NINTENDO64 for Nintendo Switch Online』にて5月19日に配信されました『星のカービィ64』。
カービィシリーズの中では今なお高い人気を誇り、一方で独自の要素が多く今となっては本編シリーズ屈指の異色作とも言われる作品です。
特にBGMの完成度は屈指で、ステージ曲、ボス曲、更にはステージセレクトまで非常に高い評価を得ており、ネット上の企画「みんなで決めるゲーム音楽ベスト100」のまとめページでは異様な数のランクインの記録が残されています。
もうこれくらいの時代になるとリアルタイムにプレイした記憶が残っているゲームですが、20年越しに遊んでもやはり変わらぬ面白さ、そして「カービィ」らしい安心感で楽しむことができました。
続きからもうちょっとだけ細かい話をしたいと思います。
「2.5D」のアクションゲーム
本作は後に「2.5D」と呼ばれるようになったジャンルの作品の1つであり、知名度的にはその代表作と行っても過言ではないでしょう。
時は1990年代後半。ポリゴン技術の発展に伴い、いわゆる「3Dグラフィック」のゲームが開発されるようになりました。
他ならぬ任天堂が『スーパーマリオ64』、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などでこのジャンルの先駆者となり、他社からも名作が続々と生まれています。
一方で2Dゲームも見放されてしまったわけではありません。
2Dのゲーム性を維持しながら、3D空間を利用した演出を行うゲーム――後に「2.5D」と呼ばれるようになるゲームジャンルが生まれました。
当時、このゲームジャンルで代表的だったのはシューティングゲームであり、『サンダーフォースV』や『Gダライアス』などといった名作が生まれています。
「2.5D」と言われるゲームは単にグラフィックが3Dなだけではなく、演出や敵の攻撃などに3Dグラフィックを用いていたことに大きな特色があると言えます。
2Dグラフィックでも疑似3Dと言われるタイプのゲームもあるにはありましたが、正真正銘の3Dグラフィックにならないと実現できなかったゲームがこの時代に生まれていたのです。
『星のカービィ64』もその流れから生まれた作品ではないかと思います。
操作体系こそ2Dアクションそのものですが、演出やゲーム全体のギミックには3Dグラフィックならではのものがこれでもかと用いられています。
画面奥から敵が飛んできたり、柱が倒れたり、ボスがぶん殴ってきたり……。
とにかくニンテンドウ64にふさわしいゲームにしようという意気込みが伝わってきます。
一方でカービィらしく「アクションゲームの初心者にも安心」という手触りの良さは失われていないのも好印象。
もっとも本作はギミックに挟まれて即死する場面が多く、微妙にトラウマメーカーな要素も強いのですが……。
あとは本作はボス撃破時などにカットシーンが挿入されたりしますが、キャラクターの表情がヤケに豊かだったり動きが恐ろしく良かったりと当時のカットシーンにしては凄まじい出来です。
本作のカービィは「わかもの」らしく格好付けようとして決まらないというシーンが多くてなんか笑えます。最近のカービィとはキャラの違いに驚くかも。
後のカービィシリーズとのつながり
カービィシリーズでは後に3DSの『トリプルデラックス』や『ロボボプラネット』で2.5Dを強く意識した作品が作られています。
特に『ロボボプラネット』は本作を強く意識した場面が随所に見られました。
ただ、このタイプはマルチプレイとの相性が悪いという欠点があり、『Wii』や『スターアライズ』はグラフィックは3Dだけどゲーム性は純粋な2Dという作品でした。
一方で諸問題から純粋な3Dアクションのカービィというのは長らく作られませんでした。
このあたりは『Wii』の「社長が訊く」や『ディスカバリー』の開発者インタビューで苦労が語られています。
2022年、ついに初の純・3Dアクションのカービィ『星のカービィ ディスカバリー』が発売され、見事長年の雪辱を晴らしたことは記憶に新しいです。
『ディスカバリー』は初の3Dグラフィックのカービィである『64』を意識した場面が随所に見られます。
そちらをプレイした方は是非、「2.5D」の元祖である本作も遊んで欲しいなと思います。
驚くほどのオマージュの元ネタの多さにビックリすると思いますよ。