地下6~7階。
茶番が長くなりすぎたため、2分割投稿となります。
前回に引き続き、フウカたちの設定を知らないと茶番の意味が分からないと思います。
『直下の戦線』の連載記事を読んでもらうか、キャラ設定記事を読んで貰った方がいいと思います。
シナリオの詳細はその1をご参照ください。
*おしらせ*
・マッピングツールは「方眼紙マッピング」を使用。
・アイコンはいろいろカスタムしています。
・呪文名はいわゆる「トゥルーワード」に変更は *しません*
・プレイしながら記録していたメモをほぼそのまま載せてます。
・ネタバレに対する配慮はありません。
地下6階
何やら不穏な雰囲気の地下6階。
まず扉が扉の形状をしていない。
そして階段の座標確認してテントを閉じたら即エンカウント。
……この見た目で「ナイチンゲール」はないだろう!
しかしあろうことか即死ブレスを撃ってきた! たった15ダメージ程度しか受けていないのにフウカとナオが死亡。
見た目が見た目だけに舐めて掛かってはいけなかった……。当然逃げ帰り蘇生。
ここも転移装置を中心に4方向に扉が並んでいるが、どこを抜けても最終的に東方向にしか行けない。
そして東には3つ怪しげな扉が並んでいる。横に居る女性曰く、
「ここは、精神の大門。
心の先の領域へとつながっている。
門を超えるとは人を超えること……。
心を持った人間がこの先に進むことはできない。立ち去るがいい……」
ということらしい。ここが地下5階の大司教が言っていた精神の大門か……。
腹を括って大門に踏み込むとダークゾーン。ただ少し進むとすぐに抜けられたのでそこまで脅威ではない。マジックライトを消されるのが面倒だが……。
ダークゾーンの先を少し歩いてみたが、広間に小さい部屋があちこちに並んでいるという意味では地下4階に近い構成をしているようである。
とはいえ敵の強さが段違いなので慎重にマップを埋めていこう。
ダークゾーンを抜けてすぐの扉には入ることができない。
――ふと、扉の向こうから笛の音が聞こえたような気がした。
いつかどこかで聞いたことがある気がするが思い出せない――
「……フウカさん?」
「え?」
ナオの声で正気に戻るフウカ。
「急にぼーっとしちゃって、どうしたんですか?」
「……この扉の奥から、何か聞こえた気がしたんだ。笛の音のような……」
「笛の音?」
ナオたちは顔を見合わせる。
「わたしには何も聞こえなかったですけど」
「俺も何も聞こえなかったな」
「……わたしだけに聞こえた?」
首を傾げるフウカ。
「この扉、鍵が掛かっているわけでもないようだけど、何か不思議な力で閉ざされているみたいだ。僕でも開けられないね」
「ということは"アンロックドア"もダメね。一旦別のところを探索した方がいいわ」
「そうか、じゃあいこう」
(――なんだったんだろう?)
腑に落ちない顔のフウカだったが、ここに入れないことは事実だ。ひとまず一行は立ち去ることにした。
何はともあれマップ埋め。小部屋の多くはやはり玄室エンカだが、例によって部屋の中にはアイテムが落ちている場合がある。
固定配置アイテムには使い道がなさそうな「魔法使いの弓」、ドロップアイテムからは「プレートメイル+2」や地下5階でも手に入った「ソウルスティール」が出たりしている。そろそろEJも引退だろうか……。
大きな波乱もなく外側のマップを埋め終えた。
――――
探索していて、ふと気になった部屋に入ってみた。
――薄明かりの部屋の中では、見知らぬ家族が夕食をとっていた。
誰もこちらに気づかない。
何故か見たことのある光景のような気がするが、思い出せない。
口を開いて何かを言おうとしたが、夢の中に居るように言葉にならない。
何かを思い出しそうな気が――
「フウカさん!」
「え……?」
気がつくと、目の前に居た家族は消え去っていた。
「やはり、お前にしか見えなかったものがここにあったのか?」
アキが問いかける。
「……何かを思い出しそうな気がする」
「思い出す?」
フウカの眼が揺らいでいる。いつものまっすぐさがない。
ユマは落ち着かせるようにゆっくりと問いかけた。
「わたしの失われた記憶――ここに居ると、それに少しずつ近づいていく気がする」
「心の闇に包まれた領域、それは失われた記憶。あの男が言っていたのはそういうことなのかしら」
「この先に進むと、フウカの記憶に近づいていくかもしてないってことか……」
「けどさ、記憶を思い出せるってことはいいことなんじゃないの?」
マナカが問う。しかしフウカの表情は冴えない。
「怖いんだ。思い出してはならないものが、この先にあるんじゃないかと……」
「フウカ……」
「……もし思い出すのが怖ければ、ここで立ち止まってもいいんですよ」
ナオが問いかける。アキもうなずく。
「思い出したくなけりゃ、無理しなくても良いんだぜ。
この先が真っ当な冒険だっていうなら頑張って進むところだが、お前の心を傷つけるようなことが起こるならそれは別だ」
「……先に進むのは怖い。だけど、先に進まなければならない、そんな気がしているんだ」
逡巡しながらも、フウカはこう答えた。パーティは再び歩み始めた。
他にもフウカの記憶に触れそうな部屋がいくつもあった。
死を待ちながら眠る老夫婦、子供の笑い声、ぬいぐるみを抱いて泣く気の触れた老婆……。
フウカの表情が段々険しくなるのが見えるが、それでも彼女が歩みを止めることを望まない。
仲間たちは心配しながら、ともに歩むのであった。
内周エリアを探索しているとスイッチを発見。スイッチを押すと外周エリアで閉まっていた扉が開き、下り階段を発見した。
だが拾ったアイテムで鞄の中が一杯になっている。
フウカの様子が気になるが、一行は一旦街まで帰還することにした。
目玉といえるのは「バトルアックス+2」くらいだが、これもソウルスティールと相互互換といったところである。
「回復の指輪」を持っているマナカにはこちらを持たせ、アキは引き続きソウルスティールで頑張ってもらおう。
ユマ以外のメンバーがLv12に。地下7階に進む。
地下7階
階段のある小部屋を抜けるフウカたちは目を疑った。
地下に居るはずなのに雪が降っているのである。広大な雪原が広がっている。
北西部にある大きな広間は闘技場だろうか? 中央には「ベヒーモス」が出てくるイベントマスがあったが、全然強くなかった。
北東部は巨大な建築物。中の老人曰く
「ここは万魔殿、断罪の間。
罪を裁かれる亡者が最後に訪れる場所……。」
らしい。現時点では中に入れない。
だだこの建物には外周から入るルートがある。地下6階をも上回る敵が出てくるので結構厳しいが、「転移の巻物」が頻繁に落ちるので中座しながら探索。
建物の中には侍用の装備「八幡装束」と「万魔殿の鍵」が落ちていた。
「八幡装束」はAC-10、ヒーリング+1、呪文抵抗25%のぶっ壊れ性能。マナカを最初から侍にしておくべきだったか……。
その後、マップ埋めを兼ねて雪原を当てもなく彷徨っていると、フウカが何かに反応した。
(降り積もる雪のせいで凍えそうだ)
「フウカさん? そっちに何かあるんですか?」
(ゆっくり降り積もる雪が身体を疲労させていく)
「フウカ! 聞こえているか!」
(積もった雪が、更に歩行を困難にさせる)
「待ってください! その先は危険です!」
(熱が出たときのように頭がぼうっとする――)
「フウカ!」
追いついたマナカがフウカの腕を取った!
何かに導かれたように雪山を登り始めていたフウカは、ようやく正気を取り戻した。
「わたしは一体……」
「大丈夫なのか? 一旦戻った方が良いんじゃ……」
「……この先に、何かある」
フウカが指差した先は、雪に埋もれた山の頂上だ。
追いついてきた他の仲間が目を合わせ、うなずいた。
「わかった。だけど決して無理はするんじゃないぞ」
「あたしの"レビテイト"も、範囲を出れば落ちてしまいますからね」
ナオが補助魔法を掛ける。これで雪山から滑り落ちることはないだろう。
しかし有効範囲は狭いので、6人まとまって雪山を登る。
山の頂上には、雪に埋もれた何かがあった。
「これは――笛?」
ユマが鑑定したが、特に何の変哲もない「古びた笛」であった。
フウカがそれを手に取り、無意識に吹いてみようとしたが、吹き方を思い出せないようだった。
「どう、何か思い出せそう?」
「……確かに、わたしはこの笛を知っている気がする」
「そういえば、地下6階でフウカさんだけが笛の音を聞いたって言っていたね」
カナヤが前の階層の地図を取り出し、その座標を示した。
謎の力で鍵が掛けられていた扉の座標だ。
「しかし、この雪山を降りて地下6階まで戻るのはキツいな……」
「なら、これを使いましょうよ」
不満を垂れるアキに対し、ナオは先ほど敵が落とした「転移の巻物」を取り出した。
行き先の座標が分かっているので、これですぐに移動できる。
「あと5本ありますから、今使ってしまっても良いと思います」
「話は決まりだな。フウカ、その笛の謎を解きに行こうぜ」
「わかった。行こうか」
ナオが「転移の巻物」を横に持って開こうとした。その姿が、ちょうど今見つけたのと同じような笛を構えているように見えて――
「ううっ!」
「フウカさん!?」
「うう……"菜緖"……?」
「はい、あたしはここに居ますよ」
ハッ、と顔を上げると、そこには見慣れた"ナオ"の顔があった。いつもの魔法使いのナオだ。
今一瞬頭に過った姿は――見たことがないはずの、でも何故か見慣れた気がする服を着たナオの姿は……。
「本当に大丈夫か?」
「……行こう。わたしはこの笛の謎を知らなければならない……」
憔悴した顔だったが、それでもフウカは立ち上がる。
ナオは不安な表情だったが、それでも「転移の巻物」を起動し、地下6階を指定した。
一同の姿が光に包まれ、次の瞬間、雪山には元の静けさだけが残っていた。
地下6階――笛の扉の前
パーティーは扉の前に転移した。
フウカは笛を取り出す。吹き方を思い出せないままだが、無意識のうちに息を吹き込む。
上手く吹けないが、1つ音を出すごとに記憶の欠片が自分の中にこぼれ落ちるのを感じる。
そうだ――わたしと"菜緖"は幼馴染みだった。
同じ学校で、同じ吹奏楽部の部員だった。
人付き合いが苦手なわたしにとって、菜緖は誰よりも大事な存在だった。
わたしたちは親友で、家も近かったからいつも一緒だった。
この先も、良き親友同士として人生を歩んでいくはずだったんだ。
なのに、あの雪の日に全てが――
「うぐぅっ!」
「フウカさん!」
頭を抱えて倒れ込んだフウカをナオが抱き起こす。
「これ以上は……でも思い出さなきゃ……」
「それをよこせ!」
アキがフウカから笛をひったくると、すぐに鞄に入れた。それでもフウカは頭を抱えて苦しんでいる。
見かねたナオが、フウカを自分の胸に抱きしめる。
このまま彼女がおかしくなってしまったらどうしよう――その恐怖に涙さえ浮かべながら、必死にフウカを落ち着かせようとした。
しばらくして、ようやくフウカの呼吸が落ち着いてきた。ユマが声を掛けた。
「……フウカ。貴方、うわごとのようにナオの名前を呼んでいたわよ」
「あの記憶は……わたしが教会に拾われる前の記憶じゃない」
フウカはナオの胸に顔を埋めたまま、弱々しい声で呟いた。
「え?」
「恐らく、前世みたいなものなんだと思う」
「前世……?」
「あれは、わたしがこの世界に生まれる前の記憶。あの頃から、わたしとナオ――菜緖は物心ついた頃からずっと一緒の幼馴染みで、親友だったんだ」
フウカは必死に記憶の糸をたぐりながら答える。
「本当ですか! あたしとフウカさん、そんな縁があったんですね」
どこか嬉しそうなナオ。しかしフウカの声は冴えない。
「……この先に、記憶がまだ残っている気がするんだ」
「確かに、ナオとフウカが親友だったってだけなら、そこまで苦しむことじゃないよな」
「それにこれがあの大司教が言っていた『心の闇』? って感じだね」
解せない表情のアキとカナヤ。そしてマナカが声を掛ける。
「ねえフウカ。本当にそれを思い出したい?」
マナカらしい、直球の問いであった。
フウカはしばらく逡巡したが、やがてこう答えた。
「……ここまできたら、最後まで思い出したいよ。
なんでわたしとナオはこの世界にいるのか。今もこうやって親友でいるのか――わたしは知らなければならない」
「なら、決まりだね」
マナカが笑顔でうなずいた。
「もしまたアンタが倒れてさ。戦えなくなったとしても、アタシたちがなんとかしてやるから」
「まあ、戦いには勝てないかもしれないけど、せめて一緒に生きて逃げ延びることくらいのことはするよ」
前向きなマナカと、ある意味後ろ向きなカナヤが揃って言った。
「よし、フウカもそろそろ大丈夫か。この扉が開いたみたいだし、とりあえず進んでみよう」
扉の様子を調べていたアキの言葉で、一同の腹は決まった。
フウカとナオも立ち上がり、扉の奥に歩みを進めていった。
扉の奥に進むと忍者用装備の「乱波装束」が落ちていたが、それだけだった。
いよいよ残るは地下7階の「万魔殿」だけだ。
――後編に続く。