Tea-Wi's Peaceful World

プレイしたゲームとかの記録をつれづれと( ❛‿❛ )

グラフィック向上とRPGの宿命――『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド』プレイ感想

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一通りやり終えた時点でのトレーナーカード。
コンテストとかノータッチなのでカード色が全然育ってないです。

ひとまず、殿堂入り&主要イベント全制覇までやり遂げました。伝説のポケモンも一通り捕獲。プレイ時間は約55時間。

ポケモン図鑑完成とかコンテスト制覇とかやれることはまだまだ残っていますが、ひとまず感想記事を書くには十分なネタが揃ったと思うので書くことにします。

個人的には「リメイク」としては十二分の完成度であり、細かいところにもちゃんと手が行き届いていたお陰で非常に遊びやすくなっていて良かったと思います。
初期バージョンはバグが多かったらしいのですが、結局クリアまでに1度もバグらしいものに遭遇することはありませんでしたね。

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クリア後の地下大洞窟は御三家すら通常出現する

「地下大洞窟」の出来が非常に良く、通常入手できないポケモンが山のように出てくる上、クリア後は全国図鑑埋めのために重要な役割を果たします。
特に御三家が通常入手可能なのはGJと言わざるを得ません。
伝説のポケモン収集には地下大洞窟での化石掘りが不可欠であり、図鑑埋めもあって20時間くらいは地下大洞窟で過ごしていた気がします。楽しかった。

また経験値システムが『XY』以降のものであるため、PT全体のレベルが高くなりやすく比較的楽になっている……のですが、ジムリーダーなどのボス格のポケモンには努力値が振られているようでステータスが高く、これでも一筋縄ではいきません。攻略しがいがあって楽しかったです。

 

ただ、よく言われているとおり「理想のリメイクとは?」という難問を突きつけてくる作品であったことも否定はしません。
個人的には、「『剣盾』並みのグラフィックやデザインにしたらここまで忠実なリメイクにはできなかっただろう」と思われるため、今回の形で丁度良かったのではないかという意見です。

はっきり言えば、グラフィックが良くなればなるほどRPGのマップデザインの自由度は低下します
それをはっきり突きつけられる作品として、『剣盾』と『BDSP』は良い比較対象といえるでしょう。
本記事では、その点について考えていきたいと思います。

グラフィックとマップデザインの限界

RPGにおいて、グラフィックが向上すればそれだけゲームデザインの自由度も高くなる……と思われがちですが、それは大きな間違いです。

グラフィックが向上すれば、マップデザインの自由度は確実に低下します

百聞は一見に如かず。以下の画像を見てみましょう。

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チャンピオンロード入り口付近。

これは本作終盤のダンジョン「チャンピオンロード」の入り口付近の画像です。一見何の変哲もない画像ですが、想像してみてください。

これで「剣盾」のようにトレーナーの頭身が高く、しかもシンボルエンカウントポケモンがあちこちうろつき回っていたら?

まず、マップの規模を大幅に拡大しなければならないことは明らかです
1マスの幅にポケモンがうろついていたら避けられなくなってしまいますし、そもそもイワークなどといった大型のポケモンを登場させるためには絶対的にマップの規模が足りません。

さらにグラフィックをリアルに近づけるためにはそもそもこういうマス目丸出しの地形自体が不自然ですから、結果的にマップを全面的に作り替えて……と言った作業が必要になります。

それを全てのマップに適用することを考えると、途方もない作業量になることは明らかです
ダイヤモンド・パール』のマップデザインは『剣盾』より遥かに複雑ですから、そもそもリアル化した場合再現不可能という結論が出てもおかしくありません。

これがグラフィック向上の結果マップデザインに生まれる制限の正体の一端です。
リアルにしていけば「この狭さは不自然だ」「そもそもランダムエンカウントなのもおかしい」「3Dにするとこの地形は矛盾している」……など、異常なほどの制限が作り手に襲いかかります。

結果として、『剣盾』に関する批評でよく聞く「ダンジョン攻略が物足りない」という結果になるわけです。事実、『剣盾』のダンジョンは歴代でも相当に簡易な部類でした。
かわりにダンジョン攻略以外の部分で遊び応えを持たせる形となり、ワイルドエリアのような今までなかったゲームシステムが導入されることに繋がっています。

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『剣盾』のワイルドエリア。
高レベルのポケモンがうろつく危険地帯ですが、探索しがいがあり満喫しました。

また『Let's Go! ピカチュウイーブイ』の時も、実はシンボルエンカウント化の関係で簡略化されているダンジョンがありました。ハナダの洞窟の迷路廃止なんかは象徴的でしたね。

「手数と時間」をかければ解決可能?

この問題を解決するには、とにかく「手数と時間」を掛けるしかありません
ゲームの規模を大きくすることでしか解決できないのであれば、それだけの開発資源を投下するしかないのです。

海外のいわゆる「AAA」と言われるゲームはそれこそ莫大な資金と開発期間を掛けています。
有名どころでいえば『Skyrim』でおなじみ『The Elders Scroll』シリーズ。

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Skyrim』のワンシーン。
MODをいろいろ入れていますがベースは2011年のゲームです。

美しいオープンワールド、数多のダンジョンなどで有名なゲームです。
ただし戦闘の出来はお世辞にも良いとは言い難く、ダンジョンも数こそ多いながら謎解きのデザイン自体は決して多くなく、ひたすら物量で解決している、など様々な点でせめぎ合いが見られるゲームでもあります。

そして2011年の『Skyrim』が未だ最新作であり、次世代機版の『Special Edition』を幾度もアップデートしてなんとかお茶を濁している状態です。
ようやく『TES6』の企画が出ていることが公式に認められましたが、いつ発売されるかは未だ不透明です。

他社のオープンワールドゲーも似たような状況で、同じくオープンワールド大作として有名な『Grand Theft Auto』シリーズも『GTAV』の次回作は開発すら始まっていないことが明らかにされているなど、上記の「莫大な資金と開発期間」を確保するのにどの会社も苦労していることがうかがえます。

ブームの維持の難しさ

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どの『ポケモン』にも初めてプレイする子どもたちが居ます。
(画像は『ピカブイ』より。「初心者向け」を公言された作品です)

さて、ポケモンでそのような「莫大な資金と開発期間」を確保出来るかというと、それは不可能です

理由は単純。
ポケモンはゲーム以外にもアニメ、リアルイベントなど多種多様なメディアミックスが出ている作品であり、一定期間ごとにゲームの発売が求められるからです。

子供向けの作品としての人気を維持するためにも一定期間ごとに発売しないと新規が入ってこなくなります
特にゲームをやっているであろう中学生の3年間に1回も新作が遊べないというのは致命的でして、ここを逃すと一気に新規が入ってこなかった世代の「穴」が生まれてしまいます。

これを見事にやらかしたのがファイナルファンタジー』シリーズでして、90年代にはナンバリング6作品を数え、国民的RPGの一角として『ドラゴンクエスト』と双璧を成しました。
しかし2006年の『FF13』以降新作の発売が滞り、2010年にオンライン作品『FF14』が出たものの当初は非常に不出来でプレイヤー離れを起こし、その後2016年にようやく『FF15』が発売されました。こちらも当初はバグが非常に多く祭りになったりもしましたが……。
『FF16』はPS5と同時に発表されましたが発売時期未定という有様です。

その結果、2020年のNHKの企画『発表!全ファイナルファンタジー大投票』の投票年齢層は「30~39歳が44.5%」「19歳以下は4.7%」と明らかにされ、見事に若い層が入ってこなくなっていることが浮き彫りになりました

同様に一時はポケモンを上回る圧倒的な人気を獲得していた『妖怪ウォッチ』シリーズも今や見る影もありません。

このような他のシリーズの盛衰は、ブームを起こすことは簡単でもブームを維持することが如何に難しいかということを示しています。

そしてブームを維持するのに必要なことはとにかくコンテンツの供給を止めないことです
2年に1本はゲームを発売し外伝作品も作り、毎年映画をやり、毎週のアニメを続ける、リアルイベントもやる……ということをポケモンは実に25年も続けているわけです。

ブームを維持するということは「莫大な資金と開発期間の確保」と決定的に相性が悪いということはいうまでもありません。

見えない理不尽と戦う開発の不遇

最近のポケモンは毎作のようにネット上で「炎上」を起こすのがお約束です。
発端となったのは『ブラック・ホワイト』のN絡みのストーリーの賛否両論からだったかなと思いますが、3DSに移行してからは炎上の度合いが激化。

特に『オメガルビーアルファサファイア』(ORAS)の炎上ぶりは半端ではなく、自分が見ているTwitterのTL上でも「賛否両論」という言葉すら生ぬるい、ほぼ全否定同然の言説が飛び交う大惨事でした。

決してポケモンとしての出来が悪かったわけではなく、発売当時の時勢に合わせて様々な点を「リメイク」らしく作り替えたり追加ストーリーを用意したり……何より幻のポケモンであった「デオキシス」の通常入手解禁などの魅力的な要素が多数用意されていたにもかかわらず、それらの1つ1つを徹底否定するような言説がネット上で飛び交いました。

はっきり言えば、BDSPが「忠実再現」の方向になったのは当時の炎上ぶりも影響しているとしか思えません。

『剣盾』も結構な炎上を起こしたタイトルでして、やはり「ポケモンのリストラ」という点は相当な批判がネット上で飛び交いました。
当時の感想記事でもその件に関する私見を書いたくらいです。

tea-wind.hatenablog.com

この手の批判でよく見かける言説というのは「何年掛けても良いから最高傑作を作れ」というものなのですが、それが上記の「ブームの維持」と正面からバッティングするのは言うまでもありません。
対戦バランスにしても、約900体のポケモンが居る現状で理想的なバランスを確立するのは困難の一言でしょう。

果たして10年掛けて「最高の『ポケモン』」が生まれたとして、そのときに待ってくれている「子どもたち」がどれほど居るのか、わたしには疑問に感じてなりません。
誤解を恐れずにはっきり言えば、「何年掛けても良いから」という主張はもう大人になってしまったプレイヤーによる、これからファンになる子供たちのことを考えない無責任な意見なのです

今後の『ポケモン』の展望

2022年1月には外伝作として『Pokémon LEGENDS アルセウス』の発売が予定されています。

www.pokemon.co.jp

オープンワールド風、アクション要素強めとかなりゲームデザインを大胆に変更した作品となる見込みです。
そして何より、『BDSP』が外注作となったのに対し、アルセウス』はゲームフリークによる内製作品となることでしょう

一定間隔の発売が求められる厳しい開発環境にあってなお、ゲームフリークが新たな挑戦を続ける意思は明らかです
このような環境での技術開発は決して容易ではないでしょうが、その挑戦をいちファンとして応援していきたい所存であります。