Tea-Wi's Peaceful World

プレイしたゲームとかの記録をつれづれと( ❛‿❛ )

"傑出"――『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(Switch版)プレイ感想

f:id:Tea_Wind:20211031124006j:plain

ゼルダの伝説 時のオカリナ』タイトル画面

2021年10月26日。
ニンテンドウ64」と「メガドライブ」のゲームが遊べるのが目玉の『Nintendo Switch Online +追加パック』のサービスが開始されました。

www.nintendo.co.jp

プレイ可能なニンテンドウ64のタイトルの中には、1998年に発売され全世界に衝撃を与えたあの名作――『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の姿もありました。
迷わず即日にサービスに加入したわたしは、早速『時のオカリナ』をプレイしたわけです。

発売から約23年、ニンテンドー3DSで発売されたリメイク版『ゼルダの伝説 時のオカリナ3D』(2011年)から数えても約10年。
令和の時代になった現代にあっても、決して輝きを失わぬ歴史的傑作。

この作品を語るにあたり、細部まで語ろうと思えばいくら言葉を尽くしても尽くしきれないと思います。
ですが、一言で表すならばこれ以上に適切な言葉はないでしょう。

「傑出」。

1998年、3Dゲームがようやく形になり始めた時代。
そのゲーム史において、完全なるイレギュラーと言っても過言ではない圧倒的な存在。
21世紀のゲームにも絶大な影響を与えた大傑作。
そんな『時のオカリナ』の感想を書いていきたいと思います。

わたしとロクヨン

f:id:Tea_Wind:20211031130613j:plain

わたしの64の原体験は『マリオ64』でした(画像は『スーパーマリオ3Dコレクション』版)。

早速肩透かしを食らわせるようでアレですが、わたしは『時のオカリナ』をリアルタイムではプレイしていません

幼少期のわたしはなんと言っても「マリオ」と「ドンキーコング」のファンであり、N64でいえば『スーパーマリオ64』と『マリオカート64』、そして『ドンキーコング64』が最大の友でした。
他のタイトルでは『マリオストーリー』だったり『スターフォックス64』だったりの経験はありましたが、『時のオカリナ』と『ムジュラの仮面』はすっぽり抜け落ちているのです。

理由はおそらく、当時の親から観ればわたしは『ゼルダ』を遊ばせるのに幼すぎたのだと思います。
当時の『ゼルダ』といえば任天堂の中では比較的大人向けのシリーズという印象が強かったです。当時のCMも子供が遊ぶゲームという雰囲気はあまり出ていなかったと思います。

ですから、わたしがゼルダのようなスタイルの謎解き・剣戟系の3Dアクションを遊んだのは実は『キングダムハーツ ファイナルミックス』(2002年。わたしが遊んだのは2004年に入ってからでした)が最初です。
しかし、あらかじめ『KH』を知っていたからこそ、逆に『時のオカリナ』を初めて遊んだときの衝撃は大きいものでした

わたしが初めて『時のオカリナ』を遊んだのは2011年の3DS版『時のオカリナ3D』です。
当時KHシリーズは『Re:コーデッド』(2010年)まで出ていましたが、『時のオカリナ3D』を遊んで心底驚きました。

KHシリーズの基本的なエッセンス――ロックオンシステムや3D空間の探索や謎解きなどといった要素は1998年の時点で既に確立されていたことを知ったからです。
『Re:コーデッド』がカメラ操作は背後のみ・オートジャンプ採用・謎解き要素強めなど、特にゼルダシリーズに近いゲームデザインだったことも当時の衝撃に影響を与えていたと思います。

しかも任天堂の3Dアクションとしては2作目。あの『マリオ64』ですら当時としては飛び抜けた完成度の作品だったにも関わらず、その僅か2年後に更に完成度を大幅に上げた作品が出ていたことは改めて衝撃のひとことでした

一方で実際その難易度は高く、幼少期にプレイしていたらクリアできなかっただろうことは容易に想像が付きました。大人になったわたしだからこそ感動を感じられたと思います。

卓越したゲームデザイン――「Z注目」が生み出したもの

f:id:Tea_Wind:20211031131622j:plain

「Z注目」は3D空間での自在な戦闘をも可能にした

時のオカリナ』が優れていた点は数多くのレビューで語り尽くされていますので改めて多くを語る必要はないと思いますが、やはりこれだけは触れておきたいです。

Z注目」、いわゆるロックオンシステムを3Dアクションゲームにおいて「発明」したといわれる作品です。
リンクが自動的に敵などの目標物の方向を向き、まっすぐ進んでみたり背後を取るために回ってみたり……、攻撃する時も剣を振る方向を迷わずに済んだり、弓やフックショットが自動的に狙ってくれたりと、ゲーム体験に対する貢献度はあまりにも計り知れません。

3DS版の『社長が訊く』で明かされたことですが、この「Z注目」はリンクの操作のためだけのシステムではなく、「敵にフラグを立てることで1対多の戦闘でも1対1にできるようになった」と開発者の小泉氏が語っています。

実際に複数の敵が出現するシーンが作中は多数存在しますが、Z注目を使っていれば同時に複数に襲われる理不尽な展開には決してならないようになっています。
1つのアイデアが複数の問題を解決した、任天堂らしい一例と言えるでしょう。

www.nintendo.co.jp

先ほどのKHシリーズの例を持ち出せば、当然のように「ロックオン」は搭載されています。
KHは敵以外のNPCやギミックのようなオブジェクトにもロックオンが可能なあたり、ゼルダから相当強い影響を受けていることが容易にわかります。
そして現代の3Dアクションでは搭載されていない作品を見つける方が難しいでしょう。
シリーズ初期からロックオンなしを貫いてきた『モンスターハンター』ですら2011年の『モンスターハンター3G』以降では「ターゲットカメラ」という形で導入しています。

3Dアクションにおいて「敵に自在に視点を向けられる」ことが如何に重大な意味を持つかを証明していると言えるでしょう。

限られたROM容量で優れた演出

f:id:Tea_Wind:20211031134706j:plain
f:id:Tea_Wind:20211031133609j:plain
最初のボスである「ゴーマ」。
ボス部屋の天井を見上げたときに映る不気味な瞳に驚かされたプレイヤーは多いはず。

ニンテンドウ64はROMカセット媒体でしたから、当時PSなどの他ハードで主流のプリレンダムービーを多く入れることは不可能でした。
また開発者の宮本茂氏の思想としてもプリレンダムービーはあまり使いたくなかったということが前述の『社長が訊く』でも触れられています。

しかし、全てゲーム内のリアルタイムムービーで作られているとは思えないくらい各所のムービーが印象的に仕上がっているのが『時のオカリナ』の特徴です。
特にボス戦前・撃破後のムービーの演出はどれも秀逸で、決して長くはないムービーでボスの特徴をインパクト十分にプレイヤーに伝えています。

f:id:Tea_Wind:20211031134800j:plain
f:id:Tea_Wind:20211031134802j:plain
それぞれのボスがどれも特徴的。

当時は「ムービーが使えるからムービーを使った」というゲームも少なくない時代(特にCD媒体のPS・SSには顕著でした)。そんな中、限られた容量で如何にプレイヤーに印象づけるかという点で「演出」に非常にこだわった作品であったと言えます。

わたしは常々「ゲームは性能だけじゃ語れない」と放送中でぼやいていますが、23年前のゲームがこれほど優れた演出を誇っていたということが何よりの証明ではないかと思います。
64は同時期のPS・SSよりも性能が高かったのでこの点においては論が微妙に成り立たない気がしますが、気にしないことにします。

総評――現代でも決して見劣りしない大傑作

改めて申し上げますが、1998年としてはあまりに「傑出」した作品です。
わたしはリアルタイムで遊べていないので当時の衝撃を知り得ないのですが、あえて想像するならば「一足早く21世紀の到来」を感じさせたゲームというのが的確なのではないかと思います。

詳細についてはほぼ2点に絞って話しましたが、もちろん謎解きや探索といった他のゲーム部分も文句なしの出来です。
現代でさえ余裕で通用する面白さがこの時代に確立されていたというのは衝撃的です。

ただ、操作性やグラフィックの面では流石に後年のリメイクである『時のオカリナ3D』に劣ってしまうのは否めません。
このあたりは流石に後発のリメイクなだけあるといったところでしょう。

3DSをお持ちの方は是非『時のオカリナ3D』がオススメですが、Switchだけ持っているという方も是非『Nintendo Switch Online +追加パック』に加入の上本作を遊んで頂きたいです。

なんせ『スーパーマリオ64』や『スターフォックス64』もありますし、今後あの『バンジョーとカズーイの大冒険』も配信予定。あの名作が版権の壁を乗り越えて任天堂ハードへの帰還を果たします

tea-wind.hatenablog.com

ニンテンドウ64はハードのシェアこそPSに奪われましたが、ソフトの傑出度でいえば歴代任天堂でも最強と言っても過言ではない時代。
3Dゲーム黎明期にどれほどの名作を送り出してきたか、25年を経た現代であっても体感する価値は大いにあると思います。

(15時15分ごろ追記)

当時の『ほぼ日刊イトイ新聞』の記事に宮本さんのこんな言葉がありました。

自分たちが作っているうちに気がついた、
比較するゲームが他にない」というところを
ぜひ見てほしいと思います。

本当にそう。1998年当時、『時のオカリナ』と比較できるゲームなんてありませんでした。